ス。転んだ馬は、左肩の筋をたがえましたが、乗手の方は無事でした。ハンカチの穴はよく繕《つくろ》いましたが、私はもうあぶないので、こんな危険な余興はしないことにしました。
私が自由の身にしてもらえる二三日前のことでした。宮廷の人たちを集めて、ハンカチの余興をしているところへ、にわかに一人の使が到着しました。
なんでも、数人の者が馬で、いつか私がつかまった場所を通りかゝると、一つの大きな黒いものが落ちているのを見つけました。非常に奇妙な形のもので、縁が円くひろがっています。その広さは、陛下の寝室ぐらいあり、真中のところは、人の背ほど高くなっています。はじめ、みんなは、これは生きものだろうと思って、何度もそのまわりを歩いてみましたが、草の上にじっとしたきり動かないのです。そこで、お互に肩を踏台にして、頂上にのぼってみると、上は平べったくなっています。足で踏んでみると、内側は空っぽだということがわかりました。そこで、みんなは、これはどうも人間山の物らしいと考えました。
「馬五頭あればそれを運んでまいります。」
と使者は皇帝に申し上げました。
私にはすぐ、はゝあ、そうか、とわかりました。
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