黷オょに、一人々々つまみ上げて、ハンカチの上に置き、それから指揮官たちも、その上に乗せました。整列が終ると、彼等は敵味方に分れ、模擬戦をやりはじめました。
 矢を射かけるやら、剣を抜いて追っかけっこするやら、進んだり退いたり、こんな見事な訓練は、私もまだ見たことがありません。横棒が渡してあるので、馬も人も、舞台から落っこちる心配はありません。
 皇帝は、これがすっかりお気に召したので、何日も/\この余興をやって見せよと仰せになります。一度などは、御自身でハンカチの上にお上りになって、号令をおかけになりました。とう/\終《しま》いには、厭がる皇后を無理にすかして、椅子のまゝ私に持ち上げさせました。私は訓練の有様がよく見えるように、舞台から二ヤードばかりのところに、皇后の椅子を持ち上げたのです。
 幸いにも、この余興の間、故障は一つも出なかったのです。もっとも、たゞ一度だけ、こんなことがありました。ある隊長の乗っていたあばれ馬が、あがきまわって、蹄《ひづめ》でハンカチに穴をあけ、足をすべらし、乗手もろとも転んだのです。すぐ私は助け起し、片手でその穴をふさぎ、片手で一人ずつ、兵隊をおろしまし
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