\し上げました。
「どうか、いくらでも調べてください。なんなら、すぐお目の前で裸になって御覧にもいれましょうし、ポケットを裏返してお目にかけますから。」
 これは半分は言葉、半分は手まねでやって見せました。すると皇帝は、
「では、二人の士官に命じて身体検査をやらせるが、これは臣下の生命をお前の手にゆだねるのだから、なにぶん、よろしく頼む。それから、たとえどんな品物を取り上げても、お前がこの国を去るときには、必ず返してやる。でなかったら、いゝ値段で買い取ってやってもいゝ。」
 と言われました。
 さて、二人の士官が身体検査にやって来ると、私は二人をつまみあげて、まず上衣のポケットに入れてやり、それから、順次にほかのポケットに案内してやりましだ。が、どうしても、見せたくないものを入れていたポケットだけは、見せなかったのです。
 二人の男は、ペンとインクと紙を持って、見たものを、一つ/\くわしく書きとめ、皇帝の御覧にいれるために、目録を作りました。私もあとになって、その目録を見せてもらいましたが、それは、ざっと次の通りでした。

「まず、この大きな人間山の上衣の右ポケットをよく検査したところ、たゞ一枚の大きな布を発見しました。大きさは、宮中の大広間の敷物くらいあります。
 次に左ポケットからは銀の蓋《ふた》のついた大きな箱のようなものが出てきましたが、二人には持ち上げることができませんでした。私どもはそれを開けさせ、一人が中に入ってみますと、塵のようなものが一ぱいつまっていました。その塵が私どもの顔のところまで舞い上ったときには、二人とも同時に何度もくしゃみ[#「くしゃみ」に傍点]が出ました。
 次に、チョッキの右ポケットから出てきたものは、人間三人分ぐらいの白い薄い物が、針金で幾枚も重ねて締めつけてあり、それには、いろんな形が黒くついていました。これはたぶん書物だろうと思います。一字の大きさは、私どもの手の半分ほどもあります。
 次に、チョッキの左ポケットには、一種の機械がありました。宮殿前の柵に似た長い二十本ばかりの棒が、その背中から出ているのです。これは人間山が頭の髪をとく道具と思えます。
 ズボンのポケットからは、長さ人間ほどもある、鉄の筒がありました。これは何に使うのかわかりません。右の内側のポケットからは、一すじの銀の鎖が下がり、その下の方には一つの不思議な機械がついていました。私どもは、その鎖についているものを引き出してみよ、と言いました。これは半分は銀で、半分は透明なもので出来ています。彼はこの機械を、私どもの耳の傍《かたわら》へ持って来ました。すると、水車のように絶えず音がしているのです。これは不思議な動物か、小さな神様らしく思えます。人間山の説明では、彼は何をするにも、いち/\、この機械と相談するということです。
 次に、彼は左の内ポケットから、漁夫の使うような網を取り出しました。これは財布だそうです。中には重い黄色い金属がいくつか入っていました。これがほんとの金だとすれば、大したものにちがいありません。
 このようにして、私どもは陛下の命令どおり、熱心に彼の持ち物を調べてみましたが、最後に、彼の腰のまわりに、一つの帯があるのを見つけました。それは何か大きな動物の革でこしらえたもので、その左の方からは、人間五人分の長さの剣が下っておりました。右の方からは、袋が下っておりました。
 私どもは人間山の身体から発見したものを、このように、書きとめておきます。人間山は、陛下を尊敬して、礼儀正しく、私どもを待遇してくれました。」

 この目録は皇帝の前で読みあげられました。
 皇帝は、ていねいな言葉で、その目録に書いてある品物を、私に出せと言われました。まず短刀を出せと言われたので、私は鞘ごとそれを取り出しました。このとき、皇帝は三千の兵士で私を遠くから取り囲み、いざといえば、弓矢で射るように用意されていたのでした。が、私の目は皇帝の方だけ見ていたので、それには少しも気がつきませんでした。
「その短刀を抜いてみよ。」
 と皇帝は言われました。刀は潮水で少し錆《さ》びてはいましたが、まだよく光ります。スラリと抜き放つと、兵士どもは、あッと叫んで、みんな驚き恐れました。振りかざしてみせたら、太陽の反射で、刀がピカ/\光り、兵士はみんな目がくらんでしまったのです。が、皇帝はそれほど驚かれませんでした。それをもう一度、鞘におさめて、鎖の端から六フィートほどの地上に、なるたけ静かに置け、と私に命令されました。
 次に皇帝は、鉄の筒を見せよと言われました。鉄の筒というのは、私のピストルのことです。私はそれを取り出して、その使い方を説明しました。そのピストルに火薬を詰めて、
「今から使って見せますが、どうか驚かないでください。」
 と皇
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