アとを、全部残らず、陛下に説明して聞かせました。
 国王は、この国一番の学者で、哲学や数学にくわしい方でした。はじめ、私がまだものを言わないで、まっすぐに立って歩いているのを御覧になったとき、これは誰か器用な職人が工夫して作った、ぜんまい[#「ぜんまい」に傍点]仕掛の人形だろう、とお考えになりました。けれども、私の声を聞き、私の言うことが、一つ一つ道理に合っているのを御覧になると、さすがにびっくりされたようです。
 しかし、国王は、どうして私がこの国へ来たか、それだけは、私の説明では、どうも満足されなかったようです。これはグラムダルクリッチと父親がでっちあげた作り話だろう、よい値段で売りつけるために、二人で言葉を教え込んだのだろう、というふうにお考えになりました。それで陛下は私に向って、まだ、いろ/\と質問をされました。
 私はすじみちの立つ返事を申し上げました。たゞ、私の言葉には訛《なまり》があり、農家でおぼえたのですから、宮廷の上品な言い方ではなかったわけです。
 この国では毎週、三人の大学者が、陛下のところに集まることになっていました。陛下は、その三人の学者を呼んで、この私を研究させられました。これは一たい何だろうかと、学者たちは、しきりに首をひねって、私の形を調べていましたが、みんな、まち/\のことを言うのでした。
 これはどうも自然の正しい法則から生れたものではない、こんな身体では木によじのぼることも、地面に穴を掘ることもできないから、さぞ困るだろう、ということだけは、三人とも意見が合いました。
 彼等は私の歯をよく調べてみたうえで、これは肉食動物だと言いだしました。ところが、大がいの獣は私より強いのです。野鼠でも私より敏捷でした。これでは、かたつむり[#「かたつむり」に傍点]か虫でも食べるのでなければ、生きてゆけるとは考えられないのです。ところが、いろいろやってみても、とてもそんなものは食べないということがわかりました。
 学者の一人は、もしかすると、これはまだ産れない前の子供だろう、と言いだしました。だが、それには二人の学者がすぐ反対しました。これには手も足もちゃんとついている、それに髯まである、髯は虫眼鏡で見なければわからないが、とにかく、これは数年間は生きて来たものにちがいない、と二人の学者は言うのでした。
 学者たちは、また首をひねって言います。
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