アれは侏儒《こびと》でもない、侏儒なら、王妃のお気に入りのこの国第一の小人でも、身の丈三十フィートはあるが、これはもっと小さいから、侏儒とも言えない、と不思議がるのでした。そんなふうにして、いろ/\議論をしたあげく、三人はとう/\、こう決めてしまいました。これはつまり、自然がいたずらして作り出したものだろう、ということになって、私のことを、『自然の戯れ』だと彼等は言うのでした。
 こんなふうに学者たちが私を、『自然の戯れ』だと決めてしまったので、私はそれが、ひどく不服でした。そこで、私は国王陛下に申し上げました。
「どうか私の申し上げることも少し聞いてください。私はこう見えても、これでも故国に帰りさえすれば、私と同じような背丈の人間が、何百万人といるのです。そしてそこでは、動物も樹木も家も、みんな私の身体と同じ割合で、小さくなっています。ですから、私でも、その国でなら、充分自分で身を守ることもできるし、ちゃんと立派に生きてゆけるのです。」
 私はこう言って、学者たちの見当違いを正してやったつもりなのです。しかし、彼等はたゞニヤ/\笑うばかりで、
「あんなうまいこと言うが、農夫から教え込まれたのだろう。」
 と言うのでした。
 しかし、陛下はさすがに賢いお方でした。それで、学者たちを帰らすと、もう一度、私の旧主人の農夫を呼びにやられました。私の旧主人がやって来ると、陛下はまず御自身で、彼にいろ/\とお尋ねになりました。それから、その旧主人と私と娘と、三人に目の前で話させて御覧になりました。そして、これは私たちの言ってることが、ほんとかもしれない、というふうにお考えになりました。
 陛下は王妃に、私の面倒をよくみるように言いつけられました。また、私とグラムダルクリッチが非常に仲好しなのを御覧になって、私の世話はこの娘にやらせようと、お考えになりました。そこで彼女は宮中に便利な部屋を一つあてがわれました。そして、彼女の世話をするために、家庭教師の婦人が一人、それから、着物の世話をする女中が一人、いろんな雑用をする召使が二人、それだけが彼女に附き添うことになりました。けれども、私の世話は全部、グラムダルクリッチ一人がしてくれるのでした。
 王妃は、お附きの指物師《さしものし》に言いつけて、私の寝室になるような、一つの箱を作らせになりました。これを作るには、私とグラムダルクリ
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