と易《かは》らず芝《しば》に住《す》んで居《ゐ》ましたから、往復《わうふく》ともに手を携《たづさ》へて、議論《ぎろん》を上下《じやうげ》するも大きいが、お互《たがひ》の談《はなし》も数年前《すうねんまえ》よりは真面目《まじめ》に成《な》つた、さて話をして見ると、山田《やまだ》は文章を以《も》つて立たうと云《い》ふ精神《せいしん》、私《わたし》も同断《どうだん》だ、私《わたし》の此《この》志《こゝろざし》を抱《いだ》いたのは、予備門《よびもん》に入学して一年《いちねん》許《ばかり》過《す》ぎての事であるが、山田《やまだ》は彼《か》の第二中学に居《ゐ》る時分から早く業《すで》に那様《こんな》了見《りやうけん》が有つたらしいのです、一年《いちねん》前《ぜん》に其志《そのこゝろざし》を抱《いだ》いた私《わたし》は未《ま》だ小説の筆《ふで》は仇《と》つて見なかつたのであるが、恐《おそ》る可《べ》き哉《かな》、己《おのれ》より三歳《みつ》弱《わか》い山田《やまだ》が既《すで》に竪琴草子《たてごとざうし》なる一篇《いつぺん》を綴《つゞ》つて、疾《とう》から価《あたへ》を待《ま》つ者であつたのは奈何《
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