ち》に問合《とひあは》せて、各方面《かくはうめん》から事実を挙《あ》げなければ、沿革《えんかく》と云《い》ふべき者を書く事は出来《でき》ません、
其《これ》に就《つい》て不便《ふべん》な事は、其昔《そのむかし》朝夕《あさいふ》に往来《わうらい》して文章を見せ合つた仲間の大半は、始《はじめ》から文章を以《もつ》て身を立《たて》る志《こゝろざし》の人でなかつたから、今日《こんにち》では実業家《じつげふか》に成《な》つて居《を》るのも有れば工学家《こうがくか》に成《な》つて居《を》るのも有る、其他《そのた》裁判官《さいばんくわん》も有る、会社員も有る、鉄道の駅長も有る、中《なか》には行方不明《ゆくへふめい》なのも有る、物故《ぶつこ》したのも有る、で、銘々《めい/\》業《げふ》が違《ちが》ふからして自《おのづ》から疎遠《そゑん》に成《な》る、長い月日には四|方《はう》に散《さん》じて了《しま》つて、此方《こちら》も会ふのが億劫《おくゝふ》で、いつか/\と思ひながら、今だに着手《ちやくしゆ》もせずに居《を》ると云《い》ふ始末《しまつ》です、今日《こんにち》お話を為《す》るのは些《ほん》の荒筋《あ
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