、長い夢を見たのだ!」
彼は頭《かしら》を低《た》れて足の向ふままに汀《みぎは》の方《かた》へ進行きしが、泣く泣く歩来《あゆみきた》れる宮と互に知らで行合ひたり。
「宮さん、何を泣くのだ。お前は些《ちつと》も泣くことは無いぢやないか。空涙!」
「どうせさうよ」
殆《ほとん》ど聞得べからざるまでにその声は涙に乱れたり。
「宮さん、お前に限つてはさう云ふ了簡は無からうと、僕は自分を信じるほどに信じてゐたが、それぢややつぱりお前の心は慾だね、財《かね》なのだね。如何《いか》に何でも余り情無い、宮さん、お前はそれで自分に愛相《あいそう》は尽きないかい。
好《い》い出世をして、さぞ栄耀《えよう》も出来て、お前はそれで可からうけれど、財《かね》に見換へられて棄てられた僕の身になつて見るが可い。無念と謂《い》はうか、口惜《くちをし》いと謂はうか、宮さん、僕はお前を刺殺《さしころ》して――驚くことは無い! ――いつそ死んで了ひたいのだ。それを怺《こら》へてお前を人に奪《とら》れるのを手出しも為《せ》ずに見てゐる僕の心地《こころもち》は、どんなだと思ふ、どんなだと思ふよ! 自分さへ好ければ他《ひと
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