》はどうならうともお前はかまはんのかい。一体貫一はお前の何だよ。何だと思ふのだよ。鴫沢の家には厄介者の居候《ゐさふらふ》でも、お前の為には夫ぢやないかい。僕はお前の男妾《をとこめかけ》になつた覚《おぼえ》は無いよ、宮さん、お前は貫一を玩弄物《なぐさみもの》にしたのだね。平生《へいぜい》お前の仕打が水臭い水臭いと思つたも道理だ、始から僕を一時の玩弄物の意《つもり》で、本当の愛情は無かつたのだ。さうとは知らずに僕は自分の身よりもお前を愛してゐた。お前の外には何の楽《たのしみ》も無いほどにお前の事を思つてゐた。それ程までに思つてゐる貫一を、宮さん、お前はどうしても棄てる気かい。
 それは無論金力の点では、僕と富山とは比較《くらべもの》にはならない。彼方《あつち》は屈指の財産家、僕は固《もと》より一介の書生だ。けれども善く宮さん考へて御覧、ねえ、人間の幸福ばかりは決して財《かね》で買へるものぢやないよ。幸福と財とは全く別物だよ。人の幸福の第一は家内の平和だ、家内の平和は何か、夫婦が互に深く愛すると云ふ外は無い。お前を深く愛する点では、富山如きが百人寄つても到底僕の十分の一だけでも愛することは出
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