来まい、富山が財産で誇るなら、僕は彼等の夢想することも出来んこの愛情で争つて見せる。夫婦の幸福は全くこの愛情の力、愛情が無ければ既に夫婦は無いのだ。
己《おのれ》の身に換へてお前を思つてゐる程の愛情を有《も》つてゐる貫一を棄てて、夫婦間の幸福には何の益も無い、寧《むし》ろ害になり易《やす》い、その財産を目的に結婚を為るのは、宮さん、どういふ心得なのだ。
然し財《かね》といふものは人の心を迷はすもので、智者の学者の豪傑のと、千万人に勝《すぐ》れた立派な立派な男子さへ、財の為には随分|甚《ひど》い事も為るのだ。それを考へれば、お前が偶然《ふつと》気の変つたのも、或《あるひ》は無理も無いのだらう。からして僕はそれは咎《とが》めない、但《ただ》もう一遍、宮さん善く考へて御覧な、その財が――富山の財産がお前の夫婦間にどれ程の効力があるのかと謂《い》ふことを。
雀《すずめ》が米を食ふのは僅《わづ》か十粒《とつぶ》か二十粒だ、俵で置いてあつたつて、一度に一俵食へるものぢやない、僕は鴫沢の財産を譲つてもらはんでも、十粒か二十粒の米に事を欠いて、お前に餒《ひもじ》い思を為せるやうな、そんな意気地《
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