用の無いものが、無理に算段をして嫁に帰《ゆ》かうと為るには、必ず何ぞ事情が無ければ成らない。
 婿が不足なのか、金持と縁を組みたいのか、主意は決してこの二件《ふたつ》の外にはあるまい。言つて聞かしてくれ。遠慮は要《い》らない。さあ、さあ、宮さん、遠慮することは無いよ。一旦夫に定めたものを振捨てるくらゐの無遠慮なものが、こんな事に遠慮も何も要るものか」
「私が悪いのだから堪忍して下さい」
「それぢや婿が不足なのだね」
「貫一さん、それは余《あんま》りだわ。そんなに疑ふのなら、私はどんな事でもして、さうして証拠を見せるわ」
「婿に不足は無い? それぢや富山が財《かね》があるからか、して見るとこの結婚は慾からだね、僕の離縁も慾からだね。で、この結婚はお前も承知をしたのだね、ええ?
 翁《をぢ》さん姨《をば》さんに迫られて、余義無くお前も承知をしたのならば、僕の考で破談にする方《ほう》は幾許《いくら》もある。僕一人が悪者になれば、翁さん姨さんを始めお前の迷惑にもならずに打壊《ぶちこは》して了ふことは出来る、だからお前の心持を聞いた上で手段があるのだが、お前も適《い》つて見る気は有るのかい」
 
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