なら嫌《きらひ》はございませんので」
「はははははは誰もさうです。それでは以後《これから》盛《さかん》にお遊《あす》びなさい。どうせ毎日用は無いのだから、田舎でも、東京でも西京《さいきよう》でも、好きな所へ行つて遊ぶのです。船は御嫌《おきらひ》ですか、ははあ。船が平気だと、支那《しな》から亜米利加《アメリカ》の方を見物がてら今度旅行を為て来るのも面白いけれど。日本の内ぢや遊山《ゆさん》に行《ある》いたところで知れたもの。どんなに贅沢《ぜいたく》を為たからと云つて」
「御帰《おかへり》になつたら一日赤坂の別荘の方へ遊びにお出下《いでくだ》さい、ねえ。梅が好いのであります。それは大きな梅林が有つて、一本々々種の違ふのを集めて二百本もあるが、皆老木ばかり。この梅などは全《まる》で為方《しかた》が無い! こんな若い野梅《のうめ》、薪《まき》のやうなもので、庭に植ゑられる花ぢやない。これで熱海の梅林も凄《すさまし》い。是非内のをお目に懸けたいでありますね、一日遊びに来て下さい。御馳走《ごちそう》を為ますよ。お宮さんは何が所好《すき》ですか、ええ、一番所好なものは?」
彼は陰《ひそか》に宮と語ら
前へ
次へ
全708ページ中79ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
尾崎 紅葉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング