だから、さして憎むにも当らんのだ」
「ええ、些《ほん》の太好《いけす》かないばかりです!」
「それぢや余り差《ちが》はんぢやないか」
「あんな奴は那箇《どつち》だつて可いんでさ。第一|活《い》きてゐるのが間違つてゐる位のものです。
 本当に世間には不好《いや》な奴ばかり多いのですけれど、貴方、どう云ふ者でせう。三千何百万とか、四千万とか、何でも太《たい》した人数《ひとかず》が居るのぢや御座いませんか、それならもう少し気の利《き》いた、肌合《はだあひ》の好い、嬉《うれし》い人に撞見《でつくは》しさうなものだと思ひますのに、一向お目に懸りませんが、ねえ」
「さう、さう、さう!」
「さうして富山みたやうなあんな奴がまあ紛々然《うじやうじや》と居て、番狂《ばんくるはせ》を為て行《ある》くのですから、それですから、一日だつて世の中が無事な日と云つちや有りは致しません。どうしたらあんなにも気障《きざ》に、太好《いけす》かなく、厭味《いやみ》たらしく生れ付くのでせう」
「おうおう、富山唯継散々だ」
「ああ。もうあんな奴の話をするのは馬鹿々々しいから、貴方、舎《よ》しませうよ」
「それぢやかう云ふ話が
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