で御座います」
 貫一は自ら嘲《あざけ》りて苦しげに哂《わら》へり。
「究竟《つまり》病気の所為《せゐ》なのだね」
「ですからどう云ふ御病気なのですよ」
「どうも鬱ぐのだ」
「解らないぢや御座いませんか! 鬱ぐのが病気だと有仰《おつしや》るから、どう為てお鬱ぎ遊《あそば》すのですと申せば、病気で鬱ぐのだつて、それぢや何処《どこ》まで行つたつて、同じ事ぢや御座いませんか」
「うむ、さうだ」
「うむ、さうだぢやありません、緊《しつか》りなさいましよ」
「ああ、もう酔つて来た」
「あれ、未だお酔ひに成つては可けません。お横に成ると御寐《おやすみ》に成るから、お起きなすつてゐらつしやいまし。さあ、貴方」
 お静は寄《よ》りて、彼の肘杖《ひぢづゑ》に横《よこた》はれる背後《うしろ》より扶起《たすけおこ》せば、為《せ》ん無げに柱に倚《よ》りて、女の方を見返りつつ、
「ここを富山|唯継《ただつぐ》に見せて遣りたい!」
「ああ、舎《よ》して下さいまし! 名を聞いても慄然《ぞつ》とするのですから」
「名を聞いても慄然《ぞつ》とする? さう、大きにさうだ。けれど、又考へて見れば、あれに罪が有る訳でも無いの
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