云ふと何か酷《ひど》く偉がるやうで、聞辛《ききづら》いか知らんけれど、これは心易立《こころやすだて》に、全く奥底の無いところをお話するのだ。
 いやさう考込まれては困る。陰気に成つて可かんから、話はもう罷《やめ》に為《せ》う。さうしてもつと飲み給へ、さあ」
「いいえ、どうぞお話をお聞せなすつて下さいまし」
「肴《さかな》に成るやうな話なら可いがね」
「始終狭山ともさう申してをるので御座いますけれど、旦那様は御病身と云ふ程でも無いやうにお身受申しますのに、いつもかう御元気《ごげんき》が無くて、お険《むづかし》いお顔面《かほつき》ばかりなすつてゐらつしやるのは、どう云ふものかしらんと、陰ながら御心配申してをるので御座いますが」
「これでお前さん方が来てくれて、内が賑《にぎや》かに成つただけ、私も旧《もと》から見ると余程《よつぽど》元気には成つたのだ」
「でもそれより御元気がお有《あん》なさらなかつたら、まあどんなでせう」
「死んでゐるやうな者さ」
「どうあそばしたので御座いますね」
「やはり病気さ」
「どう云ふ御病気なので」
「鬱《ふさ》ぐのが病気で困るよ」
「どう為てさうお鬱ぎあそばすの
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