、嘘でない信《しるし》に一献差《ひとつさ》すから、その積で受けてもらはう」
「はあ、是非戴かして下さいまし」
「ああ、もうこれには無い」
「無ければ嘘なので御座いませう」
「未《ま》だ半打《はんダース》の上《うへ》有るから、あれを皆注いで了はう」
「可うございますね」
 貫一が老婢を喚ぶ時、お静は逸早《いちはや》く起ち行けり。

     (二) の 三

 話頭《わとう》は酒を更《あらた》むるとともに転じて、
「それはまあ考へて見れば、随分主人の面《つら》でも、友達の面でも、踏躙《ふみにじ》つて、取る事に於ては見界《みさかひ》なしの高利貸が、如何《いか》に虫の居所が善かつたからと云つて、人の難儀――には附込まうとも――それを見かねる風ぢやないのが、何であんな格《がら》にも無い気前を見せたのかと、これは不審を立てられるのが当然《あたりまへ》だ。
 けれども、ねえ、いづれその訳が解る日も有らうし、又私といふ者が、どう云ふ人間であるかと云ふ事も、今に必ず解らうと思ふ。それが解りさへしたら、この上人の十人や二十人、私の有金の有たけは、助けやうが、恵まうが、少《すこし》も怪む事は無いのだ。かう
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