「ぢや見てゐらつしやるのですか。不好《いや》ですよ、馬鹿々々しい! まあ何でも可いから、ともかくも一盃召上ると成さいましよ、ね。唯今《ただいま》直《ぢき》に持つて参りますから、其処《そこ》にゐらつしやいまし」
 気軽に走り行きしが、程無く老婢《ろうひ》と共に齎《もたら》せる品々を、見好げに献立して彼の前に陳《なら》ぶれば、さすがに他の老婆子《ろうばし》が寂《さびし》き給仕に義務的|吃飯《きつぱん》を強《し》ひらるるの比にもあらず、やや難捨《すてがた》き心地もして、コップを取挙《とりあぐ》れば、お静は慣れし手元に噴溢《ふきこぼ》るるばかり酌して、
「さあ、呷《ぐう》とそれを召上れ」
 貫一はその半《なかば》を尽して、先《ま》づ息《いこ》へり。林檎を剥《む》きゐるお静は、手早く二片《ふたひら》ばかり※[#「※」は「炎+りっとう」、471−2]《そ》ぎて、
「はい、お肴《さかな》を」
「まあ、一盃上げやう」
「まあ、貴方――いいえ、可けませんよ。些《ちつ》とお顔に出るまで二三盃続けて召上れよ。さうすると幾らかお気が霽《は》れますから」
「そんなに飲んだら倒れて了ふ」
「お倒れなすたつて宜《よ
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