》う存候《ぞんじさふら》へども、何とも何とも心得難《こころえがた》く存上候《ぞんじあげさふらふ》は、御前様《おんまへさま》唯今《ただいま》の御身分に御座候《ござさふらふ》。天地は倒《さかさま》に相成候とも、御前様《おんまへさま》に限りてはと、今猶《いまなほ》私は疑ひ居り候ほど驚入《おどろきいり》まゐらせ候。世に生業《なりはひ》も数多く候に、優き優き御心根にもふさはしからぬ然《さ》やうの道に御入《おんい》り被成候《なされさふらふ》までに、世間は鬼々《おにおに》しく御前様《おんまへさま》を苦め申候《まをしさふらふ》か。田鶴見様方《たずみさまかた》にて御姿《おんすがた》を拝し候後《さふらふのち》始《はじめ》て御噂承《おんうはさうけたま》はり、私は幾日《いくか》も幾日も泣暮し申候。これには定て深き仔細《しさい》も御座候はんと存候へども、玉と成り、瓦《かはら》と成るも人の一生に候へば、何卒《なにとぞ》昔の御身に御立返《おんたちかへ》り被遊《あそばされ》、私の焦れ居りまゐらせ候やうに、多くの人にも御慕《おんしたは》れ被遊候《あそばされさふらふ》御出世の程をば、偏《ひとへ》に偏《ひとへ》に願上《ねが
前へ 次へ
全708ページ中676ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
尾崎 紅葉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング