居《を》り候内《さふらふうち》にも、涙こぼれ候て致方無《いたしかたな》く、覚えず麁相《そそう》いたし候て、かやうに紙を汚《よご》し申候。御容《おんゆる》し被下度候《くだされたくさふらふ》。
さ候へば私事《わたくしこと》如何《いか》に自ら作りし罪の報《むくい》とは申ながら、かくまで散々の責苦《せめく》を受け、かくまで十分に懺悔致《ざんげいた》し、此上は唯死ぬるばかりの身の可哀《あはれ》を、つゆほども御前様には通じ候はで、これぎり空《むなし》く相成候が、余《あまり》に口惜《くちをし》く存候故《ぞんじさふらふゆゑ》、一生に一度の神仏《かみほとけ》にも縋《すが》り候て、此文には私一念を巻込め、御許《おんもと》に差出《さしいだ》しまゐらせ候。
返す返すも悔《くやし》き熱海の御別《おんわかれ》の後の思、又いつぞや田鶴見《たずみ》子爵の邸内にて図らぬ御見致候《ごけんいたしさふらふ》而来《このかた》の胸の内、其後《そののち》途中《とちゆう》にて御変《おんかは》り被成候《なされさふらふ》荒尾様《あらをさま》に御目《おんめ》に懸り、しみじみ御物語《おんものがたり》致候事《いたしさふらふこと》など、先達
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