にくしみつよ》き私《わたくし》には候《さふら》へども、何卒《なにとぞ》是《これ》は前非を悔いて自害いたし候|一箇《ひとり》の愍《あはれ》なる女の、御前様《おんまへさま》を見懸《みか》けての遺言《ゆいごん》とも思召《おぼしめ》し、せめて一通《ひととほ》り御判読《ごはんどく》被下候《くだされさふら》はば、未来までの御情《おんなさけ》と、何より嬉《うれし》う嬉う存上《ぞんじあ》げまゐらせ候。
 扨《さて》とや、先頃に久々とも何とも、御生別《おんいきわかれ》とのみ朝夕《あさゆふ》に諦《あきら》め居《を》り候|御顔《おんかほ》を拝し、飛立つばかりの御懐《おんなつか》しさやら、言ふに謂れぬ悲しさやらに、先立つものは涙にて、十年越し思ひに思ひまゐらせ候事何一つも口には出ず、あれまでには様々の覚悟も致し、また心苦《こころぐるし》き御目《おんめ》もじの恥をも忍び、女の身にてはやうやうの思にて参じ候効《さふらふかひ》も無く、誠に一生の無念に存じまゐらせ候。唯其折《ただそのをり》の形見には、涙の隙《ひま》に拝しまゐらせ候|御姿《おんすがた》のみ、今に目に附き候て旦暮《あけくれ》忘《わす》れやらず、あらぬ人の
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