は覚えず貫一の面《おもて》を見据ゑて、更にその目を窃《ひそか》に合せつ。
四辺《あたり》も震ふばかりに八声《やこゑ》の鶏《とり》は高く唱《うた》へり。
夜すがら両個《ふたり》の運星|蔽《おほ》ひし常闇《とこやみ》の雲も晴れんとすらん、隠約《ほのぼの》と隙洩《すきも》る曙《あけぼの》の影は、玉の緒《を》長く座に入りて、光薄るる燈火《ともしび》の下《もと》に並べるままの茶碗の一箇《ひとつ》に、小《ちひさ》き蛾《が》有りて、落ちて浮べり。
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新 続 金 色 夜 叉
第 一 章
生れてより神仏《かみほとけ》を頼み候事《さふらふこと》とては一度も無御座候《ござなくさふら》へども、此度《このたび》ばかりはつくづく一心に祈念致し、吾命《わがいのち》を縮め候代《さふらふかはり》に、必ず此文は御目《おんめ》に触れ候やうにと、それをば力に病中ながら筆取りまゐらせ候。幸《さいはひ》に此の一念通じ候て、ともかくも御披《おんひらか》せ被下候《くだされさふら》はば、此身は直ぐ相果《あひは》て候とも、つゆ憾《うらみ》には不存申候《ぞんじまをさずさふらふ》。元より御憎悪強《おん
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