合《ふしあはせ》、棄てた者も、棄てられた者も、互に好《い》い事は無いのです。私は現にさう云ふのを睹《み》てゐる! 睹てゐるから今貴下方がかうして一処に死ぬまでも離れまいと云ふまでに思合つた、その満足はどれ程で、又そのお互の仕合は、実に謂ふに謂はれん程の者であらう、と私は思ふ。
 それに就けても、貴方のその美い心掛、立派な心掛、どうかその宝は一生|肌身《はだみ》に附けて、どんな事が有らうとも、決して失はんやうに為て下さい!――可う御座いますか。さうして、貴下方はお二人とも末長く、です、毎《いつ》も今夜のやうなこの心を持つて、睦《むつまじ》く暮して下さい、私はそれが見たいのです!
 今は死ぬところでない、死ぬには及びません、三千円や四千円の事なら、私がどうでも為て上げます」
 聞訖《ききをは》りし両個《ふたり》が胸の中は、諸共《もろとも》に潮《うしほ》の如きものに襲はれぬ。
 未《ま》だ服さざりし毒の俄《にはか》に変じて、この薬と成れる不思議は、喜ぶとよりは愕《おどろ》かれ、愕くとよりは打惑《うちまど》はれ、惑ふとよりは怪《あやし》まれて、鬼か、神か、人ならば、如何《いか》なる人かと、彼等
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