生涯その心掛を忘れずにゐて下さい! その心掛は、貴方の宝ですよ。又狭山さんの宝、則《すなは》ち貴下方夫婦の宝なのです!
 今後とも、貴方は狭山さんの為には何日《いつ》でも死んで下さい。何日でも死ぬと云ふ覚悟は、始終きつと持つてゐて下さい。可う御座いますか。
 千万人の中から唯一人見立てて、この人はと念《おも》つた以上は、勿論《もちろん》その人の為には命を捨てるくらゐの了簡が無けりや成らんのです。その覚悟が無いくらゐなら、始から念はん方が可いので、一旦念つたら骨が舎利《しやり》に成らうとも、決して志を変へんと云ふのでなければ、色でも、恋でも、何でもないです! で、若《も》し好いた、惚《ほ》れたと云ふのは上辺《うはべ》ばかりで、その実は移気な、水臭い者とも知らず、這箇《こつち》は一心に成つて思窮《おもひつ》めてゐる者を、いつか寝返《ねがへり》を打れて、突放されるやうな目に遭《あ》つたと為たら、その棄てられた者の心の中は、どんなだと思ひますか」
 彼の声音《こわね》は益す震へり。
「さう云ふのが有ります! 私は世間にはさう云ふのの方が多いと考へる。そんな徒爾《いたづら》な色恋は、為た者の不仕
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