痛快に堪《た》へざる者あるなり。
 正にこれ、垠《はてし》も知らぬ失恋の沙漠《さばく》は、濛々《もうもう》たる眼前に、麗《うるはし》き一望のミレエジは清絶の光を放ちて、甚《はなは》だ饒《ゆたか》に、甚だ明《あきら》かに浮びたりと謂はざらん哉《や》。
 彼は幾《ほとん》どこの女の宮ならざるをも忘れて、その七年の憂憤を、今夜の今にして始て少頃《しばらく》も破除《はじよ》するの間《いとま》を得つ。信《まこと》に得難かりしこの間《いとま》こそ、彼が宮を失ひし以来、唯《ただ》これに易《か》へて望みに望みたりし者ならずと為《せ》んや。
 嗚呼《ああ》麗《うるはし》きミレエジ!
 貫一が久渇《きゆうかつ》の心は激く動《うごか》されぬ。彼は声さへやや震ひて、
「さう申しては失礼か知らんが、貴方の商売柄で、一箇《ひとり》の男を熟《じつ》と守つて、さうしてその人の落目に成つたのも見棄てず、一方には、身請の客を振つてからに、後来《これから》花の咲かうといふ体を、男の為には少しも惜まずに死なうとは、実に天晴《あつぱれ》なもの! 余り見事な貴方のその心掛に感じ入つて、私は……涙が……出ました。
 貴方は、どうか
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