はづかし》められたらんやうにも怒《いかり》を作《な》せしかど、既に勝負は分明《ぶんめい》にして、我は手を束《つか》ねてこの弱敵の自ら僵《たふ》るるを看《み》んと思へば、心|稍《やや》落ゐぬ。
「は、はあ、富山重平、聞いてをります、偉い財産家で」
 この一言に隆三の面《おもて》は熱くなりぬ。
「これに就いては私《わし》も大きに考へたのだ、何《なに》に為《し》ろ、お前との約束もあるものなり、又一人娘の事でもあり、然《しか》し、お前の後来《こうらい》に就《つ》いても、宮の一身に就いてもの、又私たちは段々取る年であつて見れば、その老後だの、それ等の事を考へて見ると、この鴫沢の家には、お前も知つての通り、かうと云ふ親類も無いで、何かに就けて誠に心細いわ、なう。私たちは追々年を取るばかり、お前たちは若《わか》しと云ふもので、ここに可頼《たのもし》い親類が有れば、どれ程心丈夫だか知れんて、なう。そこで富山ならば親類に持つても可愧《はづかし》からん家格《いへがら》だ。気の毒な思をしてお前との約束を変易《へんがへ》するのも、私たちが一人娘を他《よそ》へ遣つて了ふのも、究竟《つまり》は銘々の為に行末好かれ
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