、何方《どちら》へ御遣《おつかは》しになるのですか」
「それは未《ま》だ確《しか》とは極《きま》らんがの、下谷《したや》に富山銀行と云ふのがある、それ、富山重平な、あれの息子の嫁に欲いと云ふ話があるので」
それぞ箕輪の骨牌会《かるたかい》に三百円の金剛石《ダイアモンド》を※[#「※」は「火+玄」、49−1]《ひけら》かせし男にあらずやと、貫一は陰《ひそか》に嘲笑《あざわら》へり。されど又余りにその人の意外なるに駭《おどろ》きて、やがて又彼は自ら笑ひぬ。これ必ずしも意外ならず、苟《いやし》くも吾が宮の如く美きを、目あり心あるものの誰《たれ》かは恋ひざらん。独《ひと》り怪しとも怪きは隆三の意《こころ》なる哉《かな》。我《わが》十年の約は軽々《かろがろし》く破るべきにあらず、猶《なほ》謂無《いはれな》きは、一人娘を出《いだ》して嫁《か》せしめんとするなり。戯《たはむ》るるにはあらずや、心狂へるにはあらずや。貫一は寧《むし》ろかく疑ふをば、事の彼の真意に出でしを疑はんより邇《ちか》かるべしと信じたりき。
彼は競争者の金剛石《ダイアモンド》なるを聞きて、一度《ひとたび》は汚《けが》され、辱《
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