おもしろをかし》く暮してゐた夢も全く覚めて、考へれば考へるほど、自分の身が余《あんま》りつまらなくて、もうどうしたら可いんだらう、と鬱《ふさ》ぎ切つてゐる矢先へ、今度は身請と来たんで御座います」
「うむ、身請――けれども、貴方を別にどう為たと云ふ事も無くて、直《すぐ》に身請と云ふのですか」
「さうなので」
「変な奴な! さう云ふ身請の為方《しかた》が、然し、有りますか」
「まあ御座いませんです」
「さうでせう。それで、身請をして他《ほか》へ囲《かこ》つて置かうとでも云ふのですか」
「はい、これまで色々な事を申しても、私が聴きませんもんで、末始終気楽に暮せるやうにして遣つたら、言分は無からうと云つたやうな訳で、まあ身請と出て来たんで。何ですか、今の妻君は、あれはどうだから、かう為るとか、ああ為るとか、好いやうな嬉《うれし》がらせを言つちやをりましたけれど」
 眉《まゆ》を昂《あ》げたる貫一、なぞ彼の心の裏《うち》に震ふものあらざらんや。
「妻君に就いてどう云ふ話が有るのですか」
「何んですか知りませんが、あの人の言ふんでは、その妻君は、始終寐てゐるも同様の病人で、小供は無し、用には立たず
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