目《ふたことめ》には金々と、金の事さへ言へば人は難有《ありがた》がるものかと思つて、俺がかうと思《おも》や千円出すとか、ここへ一万円積んだらどうするとか、始終そんな有余るやうな事ばかり言ふのが癖だもんですから、衆《みんな》が『御威光』と云ふ仇名《あだな》を附けて了つて、何処へ行つたつて気障《きざ》がられてゐる事は、そりや太甚《ひど》いんで御座います」
「ああ、さうですか」
「そんな風なんですから、体好く辞つたくらゐぢや、なかなか感じは為ませんので、可《い》けもしない事を不相変《あひかはらず》執煩《しつくど》く、何だかだ言つてをりましたけれど、這箇《こつち》も剛情で思ふやうに行かないもんですから、了局《しまひ》には手を易《か》へて、内のお袋へ親談《ぢかだん》をして、内々話は出来たんで御座んせう。どうもそんなやうな様子で、お袋は全で気違のやうに成つて、さあ、私を責めて責めて、もう箸《はし》の上下《あげおろし》には言れますし、狭山と切れろ切れろの聒《やかまし》く成りましたのも、それからなので、私は辛《つら》さは辛し、熟《つくづ》くこんな家業は為る者ぢやないと、何《なんに》も解らずに面白可笑《
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