《どこ》までも私は剛情を張通して了つたので御座います」
「吁《ああ》! それは貴方が悪いな」
「はい、もう私の善いところは一つでも有るのぢや御座いません。その事に就きまして、主人に書置《かきおき》も致しましたやうな次第で、既に覚悟を極《きは》めました際《きは》まで、心懸《こころがかり》と申すのは、唯そればかりなので御座いました。
 で又その最中にこれの方の身請騒《みうけさわぎ》が起りましたので」
「成程!」
「これの母親と申すのは養母で御座いまして、私も毎々話を聞いてをりますが、随分それは非道な強慾な者で御座います。まあ悉《くはし》く申上げれば、長いお話も御座いますが、これも娘と申すのは名のみで、年季で置いた抱《かかへ》も同様の取扱《とりあつかひ》を致して、為て遣る事は為ないのが徳、稼《かせ》げるだけ稼がせないのは損だと云つたやうな了簡《りようけん》で、長い間無理な勤を為《さ》せまして、散々に搾《しぼ》り取つたので御座います。
 で、私の有る事も知つてはをりましたが、近頃私が追々廻らなく成つて参つたところから、さあ聒《やかまし》く言出しまして、毎日のやうに切れろ切れろで責め抜いてをりま
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