》には又|千百《いろいろ》事情が御座いまして、私の身に致しますと、その縁談は実に辞《ことわ》るにも辞りかねる義理に成つてをりますので、それを不承知だなどと吾儘《わがまま》を申しては、なかなか済む訳の者ではないので御座います」
「ああ、さうなのですか」
「そこへ持つて参つて、此度《こんど》の不都合で御座います、それさへ大目に見てくれやうと云ふので御座いますから、全《まる》で仇《かたき》をば恩で返してくれますやうな、申分《まをしぶん》の無い主人の所計《はからひ》。それを乖《もど》きましては、私は罰《ばち》が中《あた》りますので御座います。さうとは存じながら、やつぱり私の手前勝手で、如何《いか》にともその気に成れませんので、已《や》むを得ず縁談の事は拒絶《ことわり》を申しましたので御座います」
「うむ、成程」
「それが為に主人は非常な立腹で、さう吾儘《わがまま》を言ふのなら、費消《つかひこみ》を償《まと》へ、それが出来ずば告訴する。さうしては貴様の体に一生の疵《きず》が附く事だから、思反《おもひかへ》して主人の指図《さしず》に従へと、中に人まで入れて、未《ま》だ未だ申してくれましたのを、何処
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