りましたところが、到頭|逐倒《おひたふ》されて了ひまして、三千円と申上げました費消《つかひこみ》も、半分以上はそれに注込みましたので御座います。
 然し、これだけの事で御座いますれば、主人も従来《これまで》の勤労《つとめ》に免じて、又どうにも勘弁は致してくれましたので御座います。現にこの一条が発覚致しまして、主人の前に呼付けられました節も、この度《たび》の事は格別を以つて赦《ゆる》し難いところも赦して遣ると、箇様に申してはくれましたので」
「成程?!」
「と申すのには、少し又|仔細《しさい》が御座いますので。それは、主人の家内の姪《めひ》に当ります者が、内に引取つて御座いまして、これを私に妻《めあは》せやうと云ふ意衷《つもり》で、前々《ぜんぜん》からその話は有りましたので御座いますが、どうも私は気が向きませんもので、何と就かずに段々|言延《いひのば》して御座いましたのを、決然《いよいよ》どうかと云ふ手詰《てづめ》の談《はなし》に相成《あひな》りましたので。究竟《つまり》、費消《つかひこみ》は赦して遣るから、その者を家内に持て、と箇様に主人は申すので御座います」
「大きに」
「其処《そこ
前へ 次へ
全708ページ中651ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
尾崎 紅葉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング