》れざる愛に随《したが》つて奔らんと為るか。
爾思《しかおも》へる後の彼は、陰《ひそか》にかの両個《ふたり》の先に疑ひし如き可忌《いまはし》き罪人ならで、潔く愛の為に奔る者たらんを、祷《いの》るばかりに冀《こひねが》へり。若しさもあらば、彼は具《つぶさ》に彼等の苦き身の上と切なる志とを聴かんと念《おも》ひぬ。
心永く痍《きずつ》きて恋に敗れたる貫一は、殊更《ことさら》に他の成敗に就いて観《み》るを欲せるなり。彼は己《おのれ》の不幸の幾許《いかばかり》不幸に、人の幸《さち》の幾許幸ならんかを想ひて、又己の失敗の幾許無残に、人の成効の幾許十分ならんかを想ひて、又己の契の幾許薄く、人の縁《えにし》の幾許深からんかを想ひて、又己の受けし愛の幾許浅く、人の交《かは》せる情《なさけ》の幾許篤からんかを想ひて、又己の恋の障碍《さまたげ》の幾許強く、人の容れられぬ世の幾許狭からんかを想ひて。嗟呼《ああ》、既に己の恋は敗れに破れたり。知るべからざる人の恋の末終《つひ》に如何《いか》ならんかを想ひて。
昼間の程は勗《つと》めて籠《こも》りゐしかの両個《ふたり》の、夜に入りて後|打連《うちつ》れて入浴
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