見ると、十時|余程《よつぽど》廻つてゐるんでせう。※[#「※」は「さんずい+氣」、429−17]車《きしや》はもう出ず、気ばかりは急《せ》くけれど、若箇道《どつちみち》間に合ふんぢやなし、それに話は有るし為るもんだから、一晩厄介に成る事にして、髪なんぞを結んでもらひながら、些《ちつ》と訳が有つて、貴方と一処に当分身を隠すのだと云ふやうに話を為てね、それから丹子の事も悉《くはし》く言置いて遣りましたら――善い人ね、あの阿母さんは――おいおい泣出して、自分の子の事はふつつりとも言はずに、唯私の身ばかりを案じて、ああのかうのと色々言つてくれたその実意と云つたら……噫《ああ》、同じ人間でありながら、内の阿母さんは、実に、あなた、鬼ですわ! 私もあの子の阿母さんのやうな実の親が有つたらば、こんな苦労は為やしまいし、又貴方のやうな方の有るのを、さぞかし力に念《おも》つて、喜びも為やうし、大事にも為る事だらうと思つたら、もうもう悲くなつて、悲くなつて、如何《いか》に何でも余《あんま》り情無くて、私はどんなに泣きましたらう。
それに、私をばあんなに頼《たのみ》に為てゐた阿母さんの事だから、当分でも田
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