からうかと思ふと、私だつて好い気持はしないもんだから、つい向者《さつき》はあんなに言過ぎて、私は誠に済みませんでした。それはもう貴方の言ふ通り悪縁には差無《ちがひな》いんだけれど、後生だからそんな可厭《いや》な事は考へずにゐて下さい。私はこれで本望だと思つてゐる」
「生木《なまき》を割《さ》いて別れるよりは、まあ愈《まし》だ」
「別れる? 吁《ああ》! 可厭《いや》だ! 考へても慄然《ぞつ》とする! 切れるの、別れるのなんて事は、那奴《あいつ》が来ない前には夢にだつて見やしなかつたのを、切れろ切れろぢや私もどの位内で責められたか知れやしない。さうして挙句《あげく》がこんな事に成つたのも、想へば皆《みんな》那奴のお蔭だ。ええ、悔《くやし》い! 私はきつと執着《とつつ》いても、この怨《うらみ》は返して遣《や》るから、覚えてゐるが可い!」
 女は身を顫《ふるは》せて詈《ののし》るとともに、念入《おもひい》りて呪《のろ》ふが如き血相を作《な》せり。
 不知《しらず》、この恨み、詈《ののし》り、呪はるる者は、何処《いづく》の誰《だれ》ならんよ。
「那奴も好加減な馬鹿ぢやないか!」
 男は歯咬《は
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