しの付かない傷まで附けさせて、私は、狭山さん、余《あんま》り申訳が無い! 堪《かん》……忍《にん》……して下さい」
「そりやなあに、お互の事だ」
「いいえ、私がもう少し意気地が有つたら、かうでもないんだらうけれど、胸には色々在つても、それが思切つて出来ない性分だもんだから、ついこんな破滅《はめ》にも成つて了つて、私は実に済まないと、自分の身を考へるよりは、貴方の事が先に立つて、さぞ陰ぢや迷惑もしてお在《いで》なんだらうに、逢ふ度《たんび》に私の身を案じて、毎《いつ》も優くして下さるのは仇《あだ》や疎《おろか》な事ぢやないと、私は嬉《うれし》いより難有《ありがた》いと思つてゐます。だものだから、近頃ぢや、貴方に逢ふと直《ぢき》に涙が出て、何だか悲くばかりなるのが不思議だと思つてゐたら、果然《やつぱり》かう云ふ事になる讖《しらせ》だつたんでせう。
 貴方にはお気の毒だ、お気の毒だ、と始終自分が退《ひ》けてゐるのに、悪縁だなんぞと言れると、私は体が縮るやうな心持がして、ああ、さうでもない、貴方が迷惑してゐるばかりなら未だ可いけれど、取んだ者に懸り合つた、ともしや後悔してお在《いで》なんぢやな
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