せ》を着てゐたから、丁度今時分でした。湖月《こげつ》さんのあの池に好いお月が映《さ》してゐて、暖《あつたか》い晩で、貴方と一処に涼みに出たんですよ、善く覚えてゐる。あれが十九、二十、二十一、二十二と、全《まる》三年に成るのね」
「おお、さうさう。昨日《きのふ》のやうに思つてゐたが、もう三年に成るなあ」
「何だか、かう全で夢のやうね」
「吁《ああ》、夢だなあ!」
「夢ねえ!」
「お静!」
「狭山さん!」
 両箇《ふたり》は手を把《と》り、膝《ひざ》を重ねて、同じ思を猶悲《なおかなし》く、
「ゆ……ゆ……夢だ!」
「夢だわ、ねえ!」
 声立てじと男の胸に泣附く女。
「かう成るのも皆《みんな》約束事ぢやあらうけれど、那奴《あいつ》さへ居なかつたら、貴方だつて余計な苦労は為はしまいし。私は私で、ああもかうも思つて、末始終の事も大概考へて置いたのだから、もう少しの間時節が来るのを待つてゐられりや、曩日《いつか》の御神籤通《おみくじどほり》な事に成れるのは、もう目に見えてゐるのを、那奴《あいつ》が邪魔して、横紙《よこがみ》を裂くやうな事を為やがるばかりに大事に為なけりや成らない貴方の体に、取つて返
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