つまり》なのだ。俺《おれ》もかう云ふ事に成らうとは思はなかつたが、成程、悪縁と云ふ者は為方《しかた》の無いものだ」
女は尚窃《なほひそか》に泣きゐる面《おもて》を背《そむ》けたるまま、
「貴方は直《ぢき》に悪縁だ、悪縁だと言ふけれど、悪縁ならどうするんです!」
「悪縁だからかうなつたのぢやないか」
「かう成つたのがどうしたんですよ!」
「今更どうするものか」
「当然《あたりまへ》さ! 貴方は一体水臭いんだ!!」
「おい、お静《しず》、水臭いとは誰の事だ」
色を作《な》せる男の眼《まなこ》は、つと湧《わ》く涙に輝けり。
「貴方の事さ!」
女の目よりは漣々《はらはら》と零《こぼ》れぬ。
「俺の事だ?! お静……手前《てめへ》はそんな事を言つて、それで済むと思ふのか」
「済んでも済まなくても、貴方が水臭いからさ」
「未《ま》だそんな事を言やがる! さあ、何が水臭いか、それを言へ」
「はあ、言ひますとも。ねえ、貴方は他《ひと》の顔さへ見りや、直《ぢき》に悪縁だと云ふのが癖ですよ。彼我《ふたり》の中の悪縁は、貴方がそんなに言《いは》なくたつて善く知つてゐまさね。何も貴方|一箇《ひとり》の悪
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