の妻なんどにはあらじ、と独《ひと》り合点せり。

     第 三 章

 かの男女《なんによ》は※[#「※」は「女+兌」、420−16]《いと》しさに堪《た》へざらんやうに居寄りて、手に手を交《まじ》へつつ密々《ひそやか》に語れり。
「さうなの、だから私はどんなに心配したか知れやしない。なかなか貴方《あなた》がここで想つてゐるやうな訳に行きは為《し》ませんとも。そりや貴方の心配もさうでせうけれど、私の心配と云つたら、本当に無かつたの。察しるが可《い》いつて、そりや貴方、お互ぢやありませんか。吁《ああ》、私は今だに胸が悸々《どきどき》して、後から追掛《おつか》けられるやうな気持がして、何だか落着かなくて可けない」
「まあ何でも、かうして約束通り逢《あ》へりや上首尾なんだ」
「全くよ。一昨日《をととひ》の晩あたりの私の心配と云つたら、こりやどうだかと、さう思つたくらゐ、今考へて見れば、自分ながら好く出られたの。やつぱり尽きない縁なのだわ」
 些《ちよ》と男の顔を盻《みや》りて、濡《ぬ》るる瞼《まぶた》を軽く拭《ぬぐ》へり。
「その縁の尽きないのが、究竟《つまり》彼我《ふたり》の身の窮迫《
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