》が強くて、頭痛がして成らんから」
「さやうで御座いますか。唯今|直《ぢき》に片付けますです。これは唯《たつた》一つ早咲《はやざき》で、珍《めづらし》う御座いましたもんですから、先程折つてまゐつて、徒《いたづら》に挿して置いたんで御座います」
「うう、成程、早咲だね」
「さやうで御座います。来月あたりに成りませんと、余り咲きませんので、これが唯《たつた》一つ有りましたんで、紛《まぐ》れ咲《ざき》なので御座いますね」
「うう紛れ咲、さうだね」
「御案内致しませう」
風呂場に入《い》れば、一箇《ひとり》の客|先《まづ》在りて、未《ま》だ燈点《ひとも》さぬ微黯《うすくらがり》の湯槽《ゆぶね》に漬《ひた》りけるが、何様人の来《きた》るに駭《おどろ》けると覚《おぼし》く、甚《はなは》だ忙《せは》しげに身を起しつ。貫一が入れば、直《ぢき》に上ると斉《ひとし》く洗塲《ながし》の片隅《かたすみ》に寄りて、色白き背《そびら》を此方《こなた》に向けたり。
年紀《としのころ》は二十七八なるべきか。やや孱弱《かよわ》なる短躯《こづくり》の男なり。頻《しきり》に左視右胆《とみかうみ》すれども、明々地《あから
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