続 続 金 色 夜 叉
第 一 章
貫一が胸は益《ますます》苦《くるし》く成り愈《まさ》りぬ。彼を念《おも》ひ、これを思ふに、生きて在るべき心地はせで、寧《むし》ろかの怪《あやし》き夢の如く成りなんを、快からずやと疑へるなり。
彼は空《むなし》く万事を抛《なげう》ちて、懊※[#「※」は「りっしんべん+農」、400−10]《おうのう》の間に三日ばかりを過《すご》しぬ。
これを語らんに人無く、愬《うつた》へんには友無く、しかも自ら拯《すく》ふべき道は有りや。有りとも覚えず、無しとは知れど、煩《わづら》ふ者の煩ひ、悩む者の悩みて縦《ほしいま》まなるを如何《いか》にせん。彼は実にこの昏迷乱擾《こんめいらんじよう》せる一根《いつこん》の悪障を抉去《くじりさ》りて、猛火に燬《や》かんことを冀《こひねが》へり。その時彼は死ぬべきなり。生か、死か。貫一の苦悶《くもん》は漸《やうや》く急にして、終《つひ》にこの問題の前に首《かうべ》を垂るるに至れり。
値無き吾が生存は、又|同《おなじ》く値無き死亡を以つて畢《を》へしむべき者か。悔に堪《た》へざる吾が生の値無かりしを結ばんには、こ
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