までよりは一層|苦《くるしみ》を受けるのは知れてゐる。その中で俺は活きてゐて何を為るのか。
 人たるの道を尽す? 人たるの行《おこなひ》を為る? ああ、※[#「※」は「勞/心」、398−13]《うるさ》い、※[#「※」は「勞/心」]い! 人としてをればこそそんな義務も有る、人でなくさへあれば、何も要らんのだ。自殺して命を捨てるのは、一《いつ》の罪悪だと謂《い》ふ。或《あるひ》は罪悪かも知れん。けれども、茫々然《ぼうぼうぜん》と呼吸してゐるばかりで、世間に対しては何等《なにら》の益するところも無く、自身に取つてはそれが苦痛であるとしたら、自殺も一種の身始末《みじまつ》だ。増《ま》して、俺が今死ねば、忽《たちま》ち何十人の人が助り、何百人の人が懽《よろこ》ぶか知れん。
 俺も一箇《ひとり》の女|故《ゆゑ》に身を誤つたその余《あと》が、盗人《ぬすと》家業の高利貸とまで堕落してこれでやみやみ死んで了ふのは、余り無念とは思ふけれど、当初《はじめ》に出損《でそくな》つたのが一生の不覚、あれが抑《そもそ》も不運の貫一の躯《からだ》は、もう一遍|鍛直《きたへなほ》して出て来るより外《ほか》為方が無い。
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