に愧入《はぢい》りも為《す》りや、可羨《うらやまし》くもある。当初《はじめ》貴様に棄てられた為に、かう云ふ堕落をした貫一ならば、貴様の悔悟と共に俺も速《すみや》かに心を悛《あらた》めて、人たるの道に負ふところのこの罪を贖《つぐな》はなけりや成らん訳だ。
 嗟乎《ああ》、然し、何に就《つ》けても苦《くるし》い世の中だ!
 人間の道は道、義務は義務、楽《たのしみ》は又楽で、それも無けりや立たん。俺も鴫沢《しぎさわ》に居て宮を対手《あいて》に勉強してをつた時分は、この人世と云ふ者は唯面白い夢のやうに考へてゐた。
 あれが浮世なのか、これが浮世なのか。
 爾来《あれから》、今日《こんにち》までの六年間、人らしい思を為た日は唯の一日でも無かつた。それで何が頼《たのみ》で俺は活きてゐたのか。死を決する勇気が無いので活きてゐたやうなものだ! 活きてゐたのではない、死損《しにぞくな》つてゐたのだ!!
 鰐淵《わにぶち》は焚死《やけし》に、宮は自殺した、俺はどう為《す》るのか。俺のこの感情の強いのでは、又|向来《これから》宮のこの死顔が始終目に着いて、一生悲い思を為なければ成らんのだらう。して見りや、今
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