。一《ひとた》び罪を犯しても、かうして悔悟して自殺を為たのは、実に見上げた精神だ。さうなけりや成らん、天晴《あつぱれ》だぞ。それでこそ始て人間たるの面目《めんもく》が立つのだ。
 然るに、この貫一はどうか! 一端《いつぱし》男と生れながら、高が一婦《いつぷ》の愛を失つたが為に、志を挫《くぢ》いて一生を誤り、餓鬼《がき》の如き振舞《ふるまひ》を為て恥とも思はず、非道を働いて暴利を貪《むさぼ》るの外は何も知らん。その財《かね》は何に成るのか、何の為にそんな事を為るのか。
 凡《およ》そ人と謂《い》ふ者には、人として必ず尽すべき道が有る。己《おのれ》と云ふ者の外に人の道と云ふ者が有るのだ。俺はその道を尽してゐるか、尽さうと為てゐるか、思つた女と添ふ事が出来ん。唯それだけの事に失望して了つて、その失望の為に、苟《いやし》くも男と生れた一生を抛《なげう》たうと云ふのだ。人たるの効《かひ》は何処《どこ》に在る、人たる道はどうしたのか。
 噫《ああ》、誤つた!
 宮、貴様が俺に対して悔悟するならば、俺は人たるの道に対して悔悟しなけりや済まん躯《からだ》だ。貴様がかうして立派に悔悟したのを見て、俺は実
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