、悲みても猶《なほ》及ばざる思の、今は唯|極《きは》めて切なる有るのみ。
 かの烈々《れつれつ》たる怨念《おんねん》の跡無く消ゆるとともに、一旦|涸《か》れにし愛慕の情は又泉の涌《わ》くらんやうに起りて、その胸に漲《みなぎ》りぬ。苦からず哉《や》、人|亡《な》き後の愛慕は、何の思かこれに似る者あらん。彼はなかなか生ける人にこそ如何《いか》なる恨をも繋《か》くるの忍び易《やす》きを今ぞ知るなる。
 貫一は腸断《ちようた》ち涙連《なみだつらな》りて、我を我とも覚ゆる能はず。
「宮、貴様に手向《たむ》けるのは、俺のこの胸の中《うち》だ。これで成仏してくれ、よ。この世の事はこれまでだ、その代り今度の世には、貴様の言つた通り、必ず夫婦に成つて、百歳《ひやく》までも添《そひ》、添、添遂《そひと》げるぞ! 忘れるな、宮。俺も忘れん! 貴様もきつと覚えてゐろよ!」
 氷の如き宮が手を取り、犇《ひし》と握りて、永く眠れる面《おもて》を覗《のぞ》かんと為れば、涙急にして文色《あいろ》も分かず、推重《おしかさな》りて、怜《いと》しやと身を悶《もだ》えつつ少時《しばし》泣いたり。
「然し、宮、貴様は立派な者だ
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