鞳《どうとう》と瀉《そそ》ぐ早瀬の水は、駭《おどろ》く浪《なみ》の体《たい》を尽《つく》し、乱るる流の文《ぶん》を捲《ま》いて、眼下に幾個の怪き大石《たいせき》、かの鰲背《ごうはい》を聚《あつ》めて丘の如く、その勢《いきほひ》を拒《ふせ》がんと為れど、触るれば払ひ、当れば飜《ひるがへ》り、長波の邁《ゆ》くところ滔々《とうとう》として破らざる為《な》き奮迅《ふんじん》の力は、両岸も為に震ひ、坤軸《こんじく》も為に轟《とどろ》き、蹈居《ふみゐ》る土も今にや崩《くづ》れなんと疑ふところ、衣袂《いべい》の雨濃《あめこまやか》に灑《そそ》ぎ、鬢髪《びんぱつ》の風|転《うた》た急なり。
あな凄《すさま》じ、と貫一は身毛《みのけ》も弥竪《よだ》ちて、縋《すが》れる枝を放ちかねつつ、看れば、叢《くさむら》の底に秋蛇《しゆうだ》の行くに似たる径《こみち》有りて、ほとほと逆落《さかおとし》に懸崖《けんがい》を下《くだ》るべし。危《あやふ》き哉《かな》と差覗《さしのぞ》けば、茅葛《かやかつら》の頻《しきり》に動きて、小笹棘《をざさうばら》に見えつ隠れつ段々と辷《すべ》り行くは、求むる宮なり。
その死を止
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