、あたかも一鉤《いつこう》の新月白く風の柳を縫《ぬ》ふに似たり。
「貫一さん、貴方は私を見殺《みごろし》になさるのですか。どうでもこの女の手に掛けて殺すのですか! 私は命は惜くはないが、この女に殺されるのは悔《くやし》い! 悔い!! 私は悔い!!」
 彼は乱せる髪を夜叉《やしや》の如く打振り打振り、五体《ごたい》を揉《も》みて、唇《くちびる》の血を噴きぬ。彼も殺さじ、これも傷《きずつ》けじと、貫一が胸は車輪の廻《めぐ》るが若《ごと》くなれど、如何《いか》にせん、その身は内より不思議の力に緊縛《きんばく》せられたるやうにて、逸《はや》れど、躁《あせ》れど、寸分の微揺《ゆるぎ》を得ず、せめては声を立てんと為れば、吭《のんど》は又|塞《ふさが》りて、銕丸《てつがん》を啣《ふく》める想《おもひ》。
 力も今は絶々に、はや危《あやふ》しと宮は血声を揚げて、
「貴方が殺して下さらなければ、私は自害して死にますから、貫一さん、この刀を取つて、私の手に持せて下さい。さ、早く、貫一さん、後生です、さ、さ、さあ取つて下さい」
 又激く捩合《ねぢあ》ふ郤含《はずみ》に、短刀は戞然《からり》と落ちて、貫一が前
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