の光は、早くも宮が乱鬢《らんびん》を掠《かす》めて顕《あらは》れぬ。※[#「※」は「口+阿」、387−14]呀《あなや》と貫一の号《さけ》ぶ時、妙《いし》くも彼は跂起《はねお》きざまに突来る鋩《きつさき》を危《あやふ》く外《はづ》して、
「あれ、貫一さん!」
 と満枝の手首に縋《すが》れるまま、一心不乱の力を極《きは》めて捩伏《ねぢふ》せ捩伏《ねぢふ》せ、仰様《のけざま》に推重《おしかさな》りて仆《たふ》したり。
「貫、貫一さん、早く、早くこの刀を取つて下さい。さうして私を殺して下さい――貴方の手に掛けて殺して下さい。私は貴方の手に掛つて死ぬのは本望です。さあ、早く殺して、私は早く死にたい。貴方の手に掛つて死にたいのですから、後生だから一思《ひとおもひ》に殺して下さい!」
 この恐るべき危機に瀕《ひん》して、貫一は謂知《いひし》らず自ら異《あやし》くも、敢《あへ》て拯《すくひ》の手を藉《か》さんと為るにもあらで、しかも見るには堪へずして、空《むなし》く悶《もだ》えに悶えゐたり。必死と争へる両箇《ふたり》が手中の刃《やいば》は、或《あるひ》は高く、或は低く、右に左に閃々《せんせん》として
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