》の短刀なり。貫一はその殺気に撲《うた》れて一指をも得動かさず、空《むなし》く眼《まなこ》を輝《かがやか》して満枝の面《おもて》を睨《にら》みたり。宮ははや気死せるか、推伏《おしふ》せられたるままに声も無し。
「さあ、私かうして抑へてをりますから、吭《のど》なり胸なり、ぐつと一突《ひとつき》に遣《や》つてお了《しま》ひ遊ばせ。ええ、もう貴方は何を遅々《ぐづぐづ》してゐらつしやるのです。刀の持様《もちやう》さへ御存じ無いのですか、かうして抜いて!」
と片手ながらに一揮《ひとふり》揮《ふ》れば、鞘《さや》は発矢《はつし》と飛散つて、電光|袂《たもと》を廻《めぐ》る白刃《しらは》の影は、忽《たちま》ち飜《ひるがへ》つて貫一が面上三寸の処に落来《おちきた》れり。
「これで突けば可《よ》いのです」
「…………」
「さては貴方はこんな女に未《ま》だ未練が有つて、息の根を止めるのが惜くてゐらつしやるので御座いますね。殺して了はうと思ひながら、手を下す事が出来んのですね。私代つて殺して上げませう。何の雑作も無い事。些《ちよつ》と御覧あそばせな」
言下《ごんか》に勿焉《こつえん》と消えし刃《やいば》
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