が濃《こまやか》でないのは事実だ、冷淡なのは事実だ。だから、冷淡であるから情が濃でないのか。自分に対する愛情がその冷淡を打壊《うちこは》すほどに熱しないのか。或《あるひ》は熱し能《あた》はざるのが冷淡の人の愛情であるのか。これが、研究すべき問題だ」
 彼は意《こころ》に満たぬ事ある毎に、必ずこの問題を研究せざるなけれども、未だ曾《かつ》て解釈し得ざるなりけり。今日はや如何《いか》に解釈せんとすらん。

     (六) の 二

 翌日果して熱海より便《たより》はありけれど、僅《わづか》に一枚の端書《はがき》をもて途中の無事と宿とを通知せるに過ぎざりき。宛名は隆三と貫一とを並べて、宮の手蹟《しゆせき》なり。貫一は読了《よみをは》ると斉《ひと》しく片々《きれきれ》に引裂きて捨ててけり。宮の在らば如何《いか》にとも言解くなるべし。彼の親《したし》く言解《いひと》かば、如何に打腹立《うちはらだ》ちたりとも貫一の心の釈《と》けざることはあらじ。宮の前には常に彼は慍《いかり》をも、恨をも、憂《うれひ》をも忘るるなり。今は可懐《なつかし》き顔を見る能はざる失望に加ふるに、この不平に遭《あ》ひて、し
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