など》つてゐるのではあるまいか。自分は此家《ここ》の厄介者、あの人は家附の娘だ。そこで自《おのづか》ら主《しゆう》と家来と云ふやうな考が始終有つて、……否《いや》、それもあの人に能《よ》く言れる事だ、それくらゐなら始から許しはしない、好いと思へばこそかう云ふ訳に、……さうだ、さうだ、それを言出すと太《ひど》く慍《おこ》られるのだ、一番それを慍るよ。勿論《もちろん》そんな様子の些少《すこし》でも見えた事は無い。自分の僻見《ひがみ》に過ぎんのだけれども、気が済まないから愚痴も出るのだ。然し、若《もし》もあの人の心にそんな根性が爪の垢《あか》ほどでも有つたらば、自分は潔くこの縁は切つて了ふ。立派に切つて見せる! 自分は愛情の俘《とりこ》とはなつても、未《ま》だ奴隷になる気は無い。或《あるひ》はこの縁を切つたなら自分はあの人を忘れかねて焦死《こがれじに》に死ぬかも知れん。死なんまでも発狂するかも知れん。かまはん! どうならうと切れて了ふ。切れずに措《お》くものか。
 それは自分の僻見《ひがみ》で、あの人に限つてはそんな心は微塵《みじん》も無いのだ。その点は自分も能《よ》く知つてゐる。けれども情
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